かわらばんブログ ―――大学の姿勢について考える
掲載日:2019/07/08
東京新聞2019年6月28日で、立教大学がカジノ推進の人材育成を掲げる講座をマカオ大学と共催することが報じられた。それによると、この講座はカジノ産業のビジネスセミナーのような内容で「カジノ推進」の政策に呼応しているように見えるが、立教大学は共催の経緯をたずねても「コメントする予定はない」との態度とのことである。大学は産業界や政府の政策にどう距離を保つのかが大きな問題である。
この記事を読んで思い出したのは次のことである。
2018年の国会衆議院予算委員会での安倍首相の裁量労働制データの答弁に、上西充子法政大学教授が疑問を述べ(それにより答弁は撤回されたが)その後も問題点を指摘し続けた。すると与党議員からFacebookで上西氏に嫌がらせや妨害とも言える意見が相次いだ、という。
そんなとき、田中優子法政大学総長が次のメッセージを発表したのだ。(2018年5月16日)
「昨今、専門的知見にもとづき社会的発言をおこなう本学の研究者たちに対する、検証や根拠の提示のない非難や、恫喝や圧力と受け取れる言動が度重ねて起きています。その中には、冷静に事実と向き合って社会を分析し、根拠にもとづいて対応策を吟味すべき立場にある国会議員による言動も含まれます。
日本は今、前代未聞の少子高齢化社会に向かっています。誰も経験したことのない変動を迎えるにあたって、専門家としての責任においてデータを集め、分析と検証を経て、積極的にその知見を表明し、世論の深化や社会の問題解決に寄与することは、研究者たるものの責任です。その責任を十全に果たすために、適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば、断じてそれを許してはなりません…………」
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これは社会の問題解決に寄与する研究者の責任と、それを支援する大学の立場を明快に述べていて、大学に限らず社会の問題解決に取り組む多くの人にも勇気を与えた、と思う。